ライター:能登春子
4月5日よりロードショー
〈もしもあの時、……していたら〉。
そんな〈忘れられない恋〉にざわめく心を優しく癒す、
切なくも愛しいラブストーリーが誕生した。
ソウルで生まれ育った少女ナヨンは12歳の頃、
クラスメイトの少年ヘソンと互いに思いを寄せ合っていた。
しかし、ナヨンが家族と共にカナダ・トロントに移住する
ことになり、2人は互いに気持ちを伝えないまま離れ離れ
になってしまう。
ナヨンからノラという英語名で生活するようになってから
12年、24歳になったノラ(グレタ・リー)は単身で
ニューヨークに渡り、新進気鋭の劇作家として注目
されつつあった。
[4月21日アップ]
それから12年、36歳になった2人は、ノラが住むニューヨークでついに24年ぶりに再会することに。
しかし、ノラには劇作家の夫アーサー(ジョン・マガロ)がいた。
24年にわたる秘めた恋の結末がニューヨークを舞台に描かれる。自由の女神へ向かうフェリーや、
ブルックリンのレトロな回転木馬など、ワクワクするような観光名所を巡りながら、2人は近況報告
や思い出話に花を咲かせる。
けれど、言いたい言葉がのどに使えているような2人の微妙なやり取りにドキドキしてしまう。
クライマックスは、クラシックなバーを舞台にした、ノラ、ヘソン、アーサー3人による、もどかしい
ばかりの会話劇。
「私たちはどんな関係に見えるかしら?」といたずらっぽく話すノラに対し、2人の男たちは複雑な
心境に違いない。
既婚のノラが初恋のヘソンとどうなるのか? ドラマチックなラブストーリーが期待できる
シチュエーションだが、おそらく現実にはノラとヘソンのような結末がふさわしく、とても共感できる。
オフィシャルサイト
今年の米アカデミー賞で、作品賞と脚本賞にノミネートされた。
https://happinet-phantom.com/pastlives/
CINEMAライター 能登春子木香圭介/宮島一美/石倉ことこ
シネマプレイスがお届けするおすすめ映画レビューは独自の視点で新作映画をご紹介しています
忘れられない人との再会を描く
共感必至の大人のラブストーリー
掲載リスト
 パストライブス/再会
 アイアンクロー
 FLY! フライ!
 DUNE
 52ヘルツのクジラたち
 マダム・ウェブ
 コヴェナント
 ボーはおそれている
 コット、はじまりの夏
 哀れなるものたち
 コンクリートユートピア
 TILL
 ウォンカとチョコレート工場のはじまり
 エクソシスト
 ナポレオン
 法廷遊戯
 正欲
 キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
アナログ
シネマプレイスはあんか通販とともに、楽しい情報をお届けいたします。
おそらく多くの人に、どんなに思い合っていても結ばれ
なかったり、壊れてしまったりした恋があるだろう。
時間や距離、価値観や生き方の違いなど、離れることに
なった理由はさまざまだろうが、その選択は果たして
正しかったのだろうか。
一方のヘソン(ユ・テオ)は、ソウルの大学で工学を学び、兵役を経て就職したが、ずっとナヨンを
思い、探し続けていた。
やがてFacebookで繋がった2人は、オンラインチャットをするうちにかつての思いを取り戻し、
会いたい気持ちを募らせる。
しかし、アメリカで夢を追いかけるノラはヘソンと距離をとることにする。
劇作家として活躍するセリーヌ・ソンの長編映画監督デビュー作。
脚本は彼女自身の体験をベースにしているという。
そんなパーソナルで大切な思いをありのままに表現した本作は、
誰かを心の奥深くで思う尊さを静かに伝えてくれる。
たとえ失恋しても、忘れられないほど好きな人に出会えた人生は
豊かだと思う。誰もが映画の主人公。
そんなシャレた気分に浸れる大人のラブストーリーだ。


3月15日より全国公開
ライター:能登春子
ライター:能登春子
ライター:能登春子
3月15日より全国公開
4月5日より全国公開
[4月14日アップ]
ザック・エフロンがレスラー役に挑戦
“最強”の父と息子たちが辿る哀しい実話
オフィシャルサイト
オフィシャルサイト
『メッセージ』(’16年)、『ブレードランナー 2049』(’17年)など、ディテールを緻密に
練り上げた繊細なSF映画で評価を高めたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は共同脚本も担当。
ある日貴湖は、言葉を発しない長髪の少年(桑名桃李)と出会う。
若いシングルマザーの母親(西野七瀬)と2人暮らしの少年はネグレクトの状態で、
背中一面にはアザがあった。
貴湖は少年を放っておけず、家に住まわせる。
彼女もまた、幼い頃から両親に虐待されていたのだ。
9.11事件に端を発し、アメリカが「テロとの戦い」の
大義名分のもと、2021年に撤退するまで約20年に渡り
続けたアフガニスタン侵攻を題材に、米軍がアフガンに
残したあまりにも惨い問題を提起するとともに、人間の
良心を喚起させる社会派ヒューマン・サスペンス。
ライター:能登春子
怪優ホアキン・フェニックスが大活躍
謎と危険に満ちた予測不能の不条理スリラー
2003年のニューヨーク。
救急救命士をしているキャリー・ウェブ(ダコタ・
ジョンソン)は1人でも多くの命を救うため、日々
奮闘していた。
そんな中、救助活動中に生死をさまよう事故に
巻き込まれたキャリーは、それ以来、デジャブの
ような奇妙な体験をするようになる。
サイコホラー映画『ミッドサマー』の独創的すぎる
世界観で、一躍注目を集めたアリ・アスター監督が
脚本も手がけたスリラー映画。
ライター:能登春子
1月26日より全国ロードショー
[1月28日アップ]
2018年、妻と共に車の修理会社を営むジョン・キンリー
曹長(ジェイク・ギレンホール)は、アフガニスタンで
タリバンの武器や爆発物の隠し場所を探すという任務に
就く。
製作は奇想天外なSFアクション『エブリシング・
エブリウェア・オール・アット・ワンス』の大成功で、
世界的なヒットメーカーとなったスタジオA24。
孤独な少女の心の成長を見つめる
静かな展開が深い感動を呼ぶ佳作
1月26日より全国ロードショー
[1月21日アップ]
広大な砂漠を舞台にしたアクションは迫力満点で、映画のパワーを感じさせる。
それでいてド派手なだけのアクション大作に留まらないのは、キャラクターの内面がしっかり
描けているからだろう。
https://fly-movie.jp/
〈アイアンクロー〉とは、1960~70年代のアメリカで、
悪役レスラーとした活躍したフリッツ・フォン・エリックの
必殺技。
身長193cmのフリッツが巨大な手で対戦レスラーの
こめかみを鷲づかみし、まるで鉄のような爪を
食い込ませていくのだ。
自らの運命に苦悩するポールを演じるのは『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』
(’23年)でますます注目を集める若手俳優ティモシー・シャラメ。
クリストファー・ウォーケンや、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、シャーロット・
ランプリングら、演技派のベテラン俳優たちが重厚感のある演技でひきしめる。
かつて近い人に傷つけられた貴湖が、同じように苦しむ少年を救おうとする姿を、貴湖の
壮絶な過去を交えて描く。
高校失業後、貴湖に依存する母(真飛聖)の元、寝たきりの義理の父を一人で介護し、身も心も
ボロボロになっていた貴湖は、高校の同級生・美晴(小野花梨)と彼女の先輩の塾講師・安吾
(志尊淳)に救われる。
ある日、地下鉄の中で3人の少女たちが黒いマスクの男、エゼキエル・シエム(タハール・ヒル)
に襲われるビジョンを見たキャリーは、とっさに彼女たちを連れて、地下鉄から逃げ出す。
そして、少女たちを安全な場所に送り届けようと決心する。
米軍は現地のアフガン人を通訳者として雇い、通訳者たちは米軍に協力した報酬として米国への
移住ビザが約束されていた。
キンリーは優秀だが、簡単には人の指図は受けないというアーメッド(ダール・サリム)を通訳者に
選ぶ。
決してありきたりな枠にはまらない才能が結集した
本作もまた、驚愕のストーリーが展開する。
2023年に開催された第72回ベルリン国際映画祭で
グランプリを受賞したアイルランド映画。
ライター:能登春子
[3月10日アップ]
[3月24日アップ]
日本でもジャイアント馬場やアントニオ猪木などと対戦し、
一世を風靡したフリッツは、引退後、自らプロレス団体を
設立し4人の息子たちを立派なプロレスラーに育て上げた。
愛嬌たっぷりの鳥たちの奮闘に笑いっぱなし
ノリにノッてるアニメスタジオの最新作
映画のパワーがみなぎる壮絶な宇宙戦争
複雑な内面を抱えたヒーローにも注目
オフィシャルサイト
特に、貴湖に自立を促し、〈52ヘルツのクジラ〉の話を聞かせ「心の声で呼び合える“魂の番”が
きっといる」と教えてくれた安吾。貴湖の幸せを心から願っていた安吾の真意とは…。
人に傷つけられる人、人を傷つける人。
両極端な人々ばかりが出てきて、胸が苦しくなる。
人生の荒波にもまれる貴湖を演じた杉咲花や、トランスジェンダーの苦悩を
抱えた安吾役の志尊淳らの情感豊かな演技に加え、毒親を演じた西野七瀬や、
貴湖の婚約者として登場する宮沢氷魚などのヒールぶりも見事。
勢いのある若手俳優たちが今、見過ごしてはならない問題に取り組み、
人としてあるべき姿を指し示す。
クモのような特殊能力を持つヴィラン・エゼキエルの動きが人間的で、あまり
強く見えないのが残念だが、マダム・ウェブ誕生に至るアクションシーンは
壮大で、迫力満点だ。
アーメッドは一歩も動けないキンリーを手製の木のソリに乗せて引きずって、険しい山中を
歩き続ける。
気の遠くなるような道程には、至る所にタリバンの追手が迫る。
タリバンの脅威をまざまざと見せつけ手に汗握るスリリングな状況が続くが、アーメッドの努力の
甲斐があり2人は米軍に救われる。
ある夜、1人静かに寝ていたボーの部屋に何者かが「うるさい音を出すな」というメモを何度も
投げ込み、しまいにはドアを激しく叩きつけてきた。
身に覚えのないボーは恐怖を覚えるが、そのせいで翌朝寝坊してしまい、遠方に住む母を
訪ねるための飛行機に乗り遅れてしまう。
物語の中心になるのは、コットとキンセラ夫妻との生活。
粗暴な父親に急かされるまま、黙って着いていくコットの
姿は、まるで厄介払いされたかのようだ。
キンセラ家の主人ショーン(アンドリュー・ベネット)と
妻のアイリン(キャリー・クロウリー)とダンとの会話は
ぎこちなく果たしてコットがキンセラ家でうまくやって
いけるのか心配になってくる。
作品への高い評価は、社会にはびこる偏見や既成概念
へのアンチテーゼのような奇妙な物語を、豊かな想像力
を駆使し、大胆かつ圧倒的なビジュアルで描き切ったから
だろう。
ライター:能登春子
極限状態が人をどのように変えるのか
イ・ビョンホン主演のパニックスリラー
[12月24日アップ]
大人の体を持ちながら知能は幼児という謎の女性ベラの
奇想天外な冒険は本当にぶっ飛んでいて、好き嫌いや
賛否が分かれるに違いない。
しかし、観たことのない世界を体験できるのが映画の
醍醐味。
刺激的で挑戦的な映像世界をぜひ楽しんでほしい。
世界各地を襲った未曽有の大災害により、韓国・
ソウルも壊滅状態となる中、唯一、崩落を免れた
高層マンションで、生き残るための壮絶な争いが
繰り広げられる。
壮大なスケールで描かれる韓国発のパニック
スリラーだ。
ライター:能登春子
2023年12月15日より全国ロードショー
今もなお社会に影響を与える悲惨な歴史
人種差別と闘った母親の愛と勇気の物語
メイミーの哀しみ、怒り、愛情を渾身の演技で体現したダニエル・デッドワイラーは
高い評価を受け、数々の女優賞を受賞。
監督・脚本はナイジェリア出身の黒人女性監督シノヌエ・チュクウ。
エメットの祖母アルマ役で出演しているウーピー・ゴールドバーグが製作も務めている。
カラフルでスイートなお菓子が溢れる、魅惑的なウォンカのチョコレート工場がどうして
生まれたのか? 
完全オリジナルストーリーで、ウォンカの若き日々が描かれる。
しかし、原作の持ち味でもある皮肉屋で風変わりなウォンカが生まれた理由を期待すると
肩透かしをくらう。
ある日、アンジェラは亡き母に会いたいと望み、
親友のキャサリン(オリヴィア・オニール)と共に、
ソリーンの降霊を試みるために森へ向かう。
名匠リドリー・スコット監督の最新作は、〈英雄〉・
ナポレオンの実像に迫る歴史スペクタクル超大作。
ミステリー界の新星として注目される作家・五十嵐律人の
本格リーガルサスペンス小説をKing&Princeの
永瀬廉主演で映画化。
若手演技派の杉咲花、歌手・俳優として多彩に活躍する
北村匠海を共演に迎え、弁護士を目指す若者たちの間で
起こった驚くべき殺人事件の謎に迫っていく。
生き辛い世の中に生きる人々へ
稲垣吾郎と新垣結衣が静かに問いかける
原作は『桐島、部活やめるってよ』、直木賞受賞作
『何者』の作家・朝井リョウ。 読後に“価値観を激しく
揺さぶる内容”として話題を呼び、ベストセラーを
記録した小説の映画化である。
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原作は2017年に刊行されたジャーナリスト、ディヴィッド・グランの犯罪ノンフィクション
『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』。
グランが調査した細かい事実を積み重ね、膨大な長編となった原作を丁寧に再現しようたため、
映画も長尺になったようだが、実は映画には大胆な脚色が加えられている。原作の主人公は
オセージ連続殺人の調査に乗り出すFBIの特別捜査官トム・ホワイトで、タイトルにもある通り
FBI発足時の舞台裏を主軸にしたものである。
企画当初は“ヒロイック”なFBIの刑事ドラマとして、ディカプリオがトム・ホワイトを演じる予定
だったという。
悟(二宮和也)は自身が店内デザインを手がけた喫茶店
「ぴあの」で、一人で来ていたみゆき(波瑠)とひょんな
ことから意気投合する。
そして、連絡先を交換せずに「毎週木曜日に、『ぴあの』で
会う」という約束を交わす。
当然、キャシーの行動が理解できない少女たちは騒ぎ立て、勝手気ままに行動しようとする。
そんな今どきの少女たちを黙らせるのが、未来予知能力を使ったキャリーの知的で華麗な
アクションの数々。
まだスーパーヒーロー的な戦闘能力のないキャリーは、未来予知を元に状況を推理し、
しつこく少女たちを追うエゼキエルの襲来を交わしていく。
描かれるのはキンリーとアーメッドによるタリバンとの壮絶な闘い。
キンリーの部隊がタリバンの襲撃に遭い、多くの米兵たちが命を落とす中、2人だけが山中に
逃げ延びるが、やがてキンリーもタリバンに撃たれ瀕死の重傷を負ってしまう。
そんなキンリーをアーメッドが命がけで助けるのだ。
1981年、アイルランドの田舎町を舞台に、孤独な9歳の
少女コットのひと夏の出来事が描かれる。
自由を求める女性の刺激的な冒険
大胆で挑戦的な映像世界を楽しんで
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単なるサバイバル劇に留まらず、とある秘密が隠されており、どんでん返しの醍醐味が
味わえる。
『白頭山大噴火』(’19年)、『非常宣言』(’22年)など、アクション映画への出演が続く
イ・ビョンホンが、得体の知れないユートピアの指導者を演じ、ミステリアスな雰囲気を
高めている。
無残に変わり果てた息子の姿を見たメイミーは、彼の葬儀で驚くべき行動に出る。
1964年の公民権法制定まで、南部で続いていた白人至上主義体制。
黒人に無言の圧をかける白人たちの姿が本当に恐ろしい。
まだ14歳のエメットにどんな恐怖が襲ったのか、考えるだけで胸がつぶれる思いがする。
母親なら、なおのことだろう。
町角でウォンカが売り出したチョコレートは一口食べると、宙を舞ってしまうほどのおいしさで
大評判となる。
しかしウォンカは町を牛耳るチョコレート組合の3人組に目をつけられてしまう。
日常のささいなことで怖がる男ボー(ホアキン・フェニックス)
は、まるでゾンビのような不審者たちがたむろする治安の
悪い地域のアパートに独りで暮していた。
2023年度の第80回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞
を受賞。
第81回ゴールデングローブ賞では、ミュージカル・コメディ
部門で作品賞と主演女優賞(エマ・ストーン)に輝いた。
今後、発表される米アカデミー賞でも注目の的になるだろう。
[1月7日アップ]
父ダン(マイケル・パトリック)や、妊娠中の母、多くの
姉妹たちに囲まれて暮らすコット(キャサリン・クリンチ)
は物静かな女の子。
両親は赤ちゃんが生まれるまでの間、夏休み中のコットを
遠い親戚夫婦のキンセラ家に預けることにする。
1月5日より全国ロードショー
しかし、その結果、フリッツの家族たちは〈呪われた一族〉
と呼ばれるほどの苦難の人生を歩むことになる。
アメリカ北東部ニューイングランドの池に棲むカモ一家の
父マックは「安全な池にいれば一生幸せに暮らせる」と
信じていた。
ところが、好奇心旺盛な息子のダックスやおてんばな娘
グウェンは「外の世界を見たい」とせがみ、明るい妻パムも
子どもたちの希望を叶えたいと思っていた。
ライター:能登春子
3月1日より全国公開
2部作として製作された、砂の惑星デューン(DUNE)の
支配をめぐる宇宙戦争を描いた壮大なSFアクション
超大作の後編がいよいよ登場する。
[3月3日アップ]
1979年、父の跡を継ぎプロレスラーとなった次男のケビン(ザック・エフロン)がNWAテキサス州
のヘビー級チャンピオンとなる。
続いて、三男のデビッド(ハリス・ディキンソン)がプロレスデビューを果たす。
さらに、陸上選手としてオリンピックに出場する夢を絶たれた四男の大学生ケリー(ジェレミー・
アレン・ホワイト)も父に勧められプロレス界に飛び込むと、厳しい父の元で鍛錬を重ねた
兄弟レスラーたちはめきめき力を伸ばし、人気を博していく。
家族の猛プッシュに心が揺れるマックは、ずっと池で
暮してきた孤独な独身のダンおじさんの姿を見て、
一念発起。
家族を連れて3000キロ離れたカリブ海の楽園ジャマイカ
へ渡ることにする。
2021年に公開された前編
『DUNE/デューン 砂の惑星』は、SF叙事詩として
名高いフランク・ハーバードによる原作の前半部分を
描いたもので、重厚かつ複雑な物語の世界観を
余すところなく紹介し、後編への期待を高めて幕を
閉じた。
苦しむ人の心の“泣き声”に耳を傾けて
孤独に生きる人々を癒す希望の物語
オフィシャルサイト
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共同脚本を手がけたリッチー監督は、今なお続くアフガン戦争とアフガン人
通訳者のドキュメンタリーを見て、本作を着想したという。
危険なアフガニスタンで、命をかけて人を助けようとした2人の男たちの姿が
感動を呼ぶが、単にヒロイックなメッセージにとどめていないところがこの映画
の真価である。
その日はボーの母の誕生日。
ボーはすぐに母に電話をかけて謝るが、ボーが来ないことに激怒した母は電話を切ってしまう。
そして、すぐさまかけ直した電話で、ボーは母親が死亡したことを知る…。
まず、古びたアパートでボーに執拗にクレームをつける謎の住人が不気味
過ぎて怖いが、そんなことはささいに思えるほど、この後、次々にボーに
恐ろしい出来事が襲いかかる。
しかし、アイリーンはコットの髪を櫛で梳かしてあげたり、かわいい洋服を買ってあげたりと、コットに
優しく寄り添う。
また、口下手で不器用なショーンは、大人しいコットの背中を押すような存在となっていくのだ。
https://www.madame-web.jp/
2021年に本屋大賞に輝いた、町田そのこのベストセラー
小説の映画化。
互いに切磋琢磨する3兄弟は、一方で、世界ヘビー級タイトルマッチへの挑戦権をかけた
ライバルともなる。
父がデビッドを挑戦者に選んだ時、ケビンは複雑な思いに駆られる。
兄弟を演じた俳優たちは悩めるキャラクターをナイーブに演じていて、好感が持てる。
日本語吹替版では、マックの声を堺雅人が務めている。
醜い姿態をした悪の権化ウラディミール男爵や、サイキックなフェイドなどのいるアトレイデス家の
脅威、皇帝シャッダム四世が全宇宙を支配しようと画策する宇宙帝国の不気味な動きなどを
挟みながら、空前絶後の宇宙戦争へと徐々に高まりを見せる。
大分県の海を見下ろす高台の家に、東京から三島貴湖(杉咲花)が引っ越してくる。
亡き祖母の家に1人で暮らす貴湖は、周囲の人々の噂の的になっているという。
物語の中心になるケビンを演じるのは、『ハイスクール・ミュージカル』シリーズ(’06年)で
大ブレイクしたザック・エフロン。
当時のアイドル的な甘いイメージから一変し、筋骨隆々のレスラー体型を作り上げ、
迫力満点のプロレスシーンも見事にこなしている。
そんな中、日本で巡業していたデビッドが急死してしまう。
本作では、邪悪なハルコンネン家の陰謀により全滅した
アトレイデス家の逆襲が描かれる。
〈52ヘルツのクジラ〉とは、とても高い周波数で鳴く、
世界で1頭だけのクジラのこと。
どんなに鳴いても、その声はあまりに高すぎて周囲の
クジラに聴こえないことから、〈世界で最も孤独な
クジラ〉と言われているという。
ライター:能登春子
エンドロールでは、アーメッドのように米国への移住ビザを反故にされ、
アフガニスタンに留まる通訳者たちが数万人規模でいるというメッセージが
流れる。
この衝撃的なアフガン戦争の真実をぜひ多くの人に知ってほしいと思う。
母の突然の死が信じられないボーは、なんとかして母の元へ向かおうとする。
その謎と危険に満ちた道中がスリリングに描かれる。
ひたすら恐怖の渦に巻き込まれていくボーを、怪優ホアキン・フェニックスが
体当たりで演じている。
口数の少ない3人の素朴な生活はともすれば単調に映る。
驚くほど淡々とした展開なのだが、多くを語らないからこそ、三者三様の心のうちを想像してしまい、
3人のキャラクターにどんどん引き込まれていく。
ロンドンにある天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)の邸宅で、ベラ(エマ・
ストーン)は何不自由なく暮らしていた。
科学と芸術に身を捧げたバクスターの家には、頭が鳥で身体が動物といった、バクスターの
実験により生まれた奇妙な生き物が数多くいた。
そして、ベラもバクスターの実験で生を受けていた。
橋から身投げした女性の身体に、彼女が身ごもっていた赤ちゃんの脳を移植して蘇生されたのだ。
若い夫婦ミンソン(パク・ソジュン)とミョンファ(パク・
ボヨン)は自宅で大災害に見舞われるが、彼らの住む
ファングンアパートだけが奇跡的に崩落を免れる。
タイトルの『TILL』とは、1955年、黒人差別が根強く残る
アメリカ南部のミシシッピ州で、白人のリンチで殺害
された14歳の黒人少年の名前。
アメリカでは「エメット・ティル事件」として大きなニュース
となり、1960年代の公民権運動を前進させる契機と
なった。
オフィシャルサイト
端正な顔立ちのシャラメが演じるウォンカは純粋無垢で、目を輝かせてチョコレート作りに励む、
本当に“良いヤツ”。
チョコレートが大好きな気持ちを歌い踊るミュージカルシーンがふんだんにあり、アイドル的
人気を誇るシャラメのカッコよさが際立っている。
ところが2人は行方不明になってしまう。
3日後、自宅から50キロメートルも離れた場所で見つかった2人はその間の記憶を失い、
常軌を逸した行動ばかりを取るようになる。
『ジョーカー』(’18年)の鬼気迫る演技でオスカー
俳優となったホアキン・フェニックスがナポレオンを
演じ、『グラディエーター』(’00年)以来、23年ぶり
にリドリー・スコット監督とタッグを組む。
甘いお菓子を食べるとハッピーな気分になる。
チョコレートをめぐる大騒動を描いたストーリーは、単純だが何のてらいのない
平和的でハートウォーミングな世界観はとても癒される。
憂鬱な問題があふれる現実から逃れ、マジカルでファンタジックな光景を素直に
楽しみたい。
母への愛が原因で、悪魔に憑りつかれてしまった少女たちに対する悪魔祓いの過程が描かれる。
2人の少女を悪魔から救おうとする試みは、ヴィクターに加え、キャサリンの両親、ヴィクターの
隣人でアンジェラが入院する病院の看護師などから広がり、カトリック教会の神父やパブテスト
教会の牧師、ブードゥーのヒーリストなど、4つの異なる宗教と信仰が入り乱れ、大がかりな
ものとなる。
名門・法都大学のロースクールでは、生徒たちの間で
“無辜(むこ)ゲーム”と呼ばれる法廷ゲームが行われて
いた。
それは、3名のプレイヤーが被害者(告訴者)・加害者・
審判者として参加し、加害者の犯した罪を被害者が
順序立てて証言した後、審判者がどちらに本当に罪が
あるのかを判断するゲーム。
被害者の証言の仕方によっては、被害者が“無辜(罪の
ない者)”に罪を着せたとして負け、加害者が無罪放免
となり、勝つことになる。
つまり真実がゆがめられてしまうのだ。
人にはそれぞれの異なる性質が備わっている。
けれど、それが大多数の人と同じ性質でないと
気づいたとき、人は本当の自分を隠して生きて
しまうようになる。
こうして、“生き辛い世の中”が生まれる。
ライター:能登春子
10月20日より全国ロードショー
[10月14日アップ]
本作で描かれるのは家庭環境や性的志向、容姿など、
“自分では選べない”背景を持ち、苦悩する5人の姿。
多様性の時代とは名ばかりの同調圧力がはびこる
世の中で、“本当に人とわかり合うこと”とは、どういう
ことなのかを問いかける。
ディカプリオとデ・ニーロが恐るべき犯罪者に。
アメリカの闇に迫るスコセッシ監督の意欲作
1789年フランスで、王妃マリー・アントワネットの処刑が
行われる。
この光景を群衆に混ざり見ていた、コルシカ島出身の
若き軍人・ナポレオン・ボナパルト(ホアキン・フェニックス)
は、その後、フランス革命の混乱を見せるフランスで、
目覚ましい戦術の才能を発揮していく。
2月23日より全国ロードショー
[2月25日アップ]
[2月18日アップ]
〈史上最強の一家〉になるという父の大きな夢を叶えるために、プロレスラーになった兄弟たちの
姿が描かれる。
偉大な父の期待に応えたいと頑張る息子たちを、フリッツは厳しく追い込んでいく。
厳しさは成長につながる〈愛のムチ〉の場合もある。
しかし、野心からくるフリッツの厳しさは過度なプレッシャーとなり、息子たちの心は壊れていく。
『怪盗グルー』シリーズや『ミニオンズ』シリーズなど、人気CGアニメを数々手がけてきた
イルミネーションの魅力は、愛嬌たっぷりのキャラクター造詣とユーモアたっぷりのストーリー
テリング、そして、ユニークなアイデア満載のアクションシーンである。
アトレイデス家の後継者ポール(ティモシー・シャラメ)と母親のレディ・ジェシカ(レベッカ・
ファーガソン)は、不毛の惑星アラキス(デューンの正式名称)に逃げ延びる。
そこで砂漠の民フレメンに出会う。
フレメンに受け入れてもらうため、レディ・ジェシカはフレメンの教母になる儀式を受ける。
一方、未来を視る力を持つポールは、夢の中に現れる女性がフレメンの戦士チャニ(ゼンデイヤ)
であることを知る。
やがてポールとチャニは惹かれ合うが、ポールには不穏な未来が待ち受けていた。
大海原の中で、虚しさを抱えながらも懸命に“誰か”を
求めて声を出すクジラ。
そんなクジラたちは、現代社会に生きる人々の中にも
いるのではないだろうか?
2月23日より全国ロードショー
未来予知で悪と戦う知的なスーパーヒーロー
女性パワーがみなぎる異色のアクション大作
ライター:能登春子
アクション・エンターテイメント大作『マダム・ウェブ』は、
マーベル初の本格ミステリー・サスペンスとして、
予知能力を持つ謎めいたマダム・ウェブ誕生の秘密を
解き明かす。
米兵とアフガン人通訳者の死闘と友情
アフガン戦争が残した問題に鋭く迫る
『ロック、ストックトゥー・スモーキング・バレルズ』
(’98年)、『シャーロック・ホームズ』(’09年)など、
カルト映画からエンターテイメント大作まで、多彩な
ジャンルで豊かな才能を発揮するガイ・リッチー監督が
初めて挑んだ戦争映画。
2月16日より全国ロードショー
[2月11日アップ]
親子の心の溝から生まれるフリッツ家の悲劇の連鎖にはとても驚かされるが、親子関係の
問題はどこの家庭でも抱えていることだろう。親子にとって大切なことは何か、考えさせられる。
動物たちによるミュージカル・コメディ映画『SING/シング』以来、7年ぶりの同社オリジナル
キャラクターとなる本作は、渡り鳥なのに移動したことのないカモ一家が主人公。
個性豊かな鳥たちや、ひねりの効いたストーリー、スピード感あふれるアクションシーンの
素晴らしさは『ザ・スーパーマリオ~』に引けを取らない。
思い切って飛び立つことの大切さを伝えるメッセージも後味がよく、観終わった後、爽快な
気分になる。
やっぱりイルミネーション製作のアニメーションは「面白い!」と実感できる作品に仕上がっている。
味方を失ったポールがどうやって強大なハルコンネン家に立ち向かうのか。
疑り深いフレメンの信頼を得るため、巨大なサンドワーム(砂虫)を自在に操り、母親からの
生死をかけた非情な試練を生き延びたポールがアレキスの救世主として成長していく過程が
丹念に綴られていく。
辛くて、苦しくて、必死に上げる泣き声が誰にも
聴こえないとしたら…。
生き辛い世の中でもがく人々の哀しみを昇華させ、
希望へと導く。
マーベル・コミックのアクションヒロイン、マダム・ウェブ
は、未来予知でスパイダーマンを救う重要なキャラクター
として登場する。
https://ironclaw.jp/
https://wwws.warnerbros.co.jp/dune-movie/
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現実か妄想か、はたまた悪夢なのか? 
摩訶不思議なシチュエーションの意味に考えを巡らせているうちに、3時間の長尺は
あっという間にすぎる。
大家族の中で居場所を失い、ひっそりと生きてきたコット。
キンセラ夫妻との穏やかな生活がコットをどのように変えるのか。素晴らしいラストシーンに注目だ。
https://www.grtc-movie.jp/
監督は『八日目の蝉』の成島出。過酷で重いけれど、ぜひ観てほしい作品だ。
女流監督S・J・クラークソンの長編映画監督デビュー作。
超クールな女性たちによる新たなアクション映画シリーズが誕生した。
https://gaga.ne.jp/52hz-movie/
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しかし、メイミーは泣き寝入りしなかった。
間違っている社会を正すために、強い決意をもって闘った母親の姿が描かれている。
欲深い宿屋の主人スクラビット(オリビア・コールマン)に騙され、多額の借金を背負ったウォンカは
宿の地下にあるランドリー工場に閉じ込められ、30年間働かされることになってしまう。
それでも、そこで働く孤児の少女ヌードル(ケイラ・レーン)や個性的な宿の住人たちの協力を得て、
ウォンカはチョコレート店開店の夢をめざす。
11月12日アップ]
写真家のヴィクター(レスリー・オドム・Jr.)は妊娠中の
妻ソリーン(トレイシー・クレイビス)をハイチ地震で
失ってしまう。
それから13年、ヴィクターは1人娘のアンジェラ
(リディア・ジュエット)を大切に育ててきた。
ライター:能登春子
11月10日より全国ロードショー
ライター:能登春子
12月1日より全国ロードショー
リドリー・スコット監督が描く
愛と戦禍に生きたナポレオン
ゆがめられた真実を見抜けるか
若者たちが繰り広げる緻密な法廷ゲーム
ライター:能登春子
11月10日より全国ロードショー
[10月29日アップ]
https://klockworx-asia.com/CU/
監督は『女王陛下のお気に入り』(’18年)で注目を集めた鬼才ヨルゴス・ランティモス。
死が迫る極限状態でのサバイバルを描いた映画は数多いが、本作の恐ろしいところは、
ユートピアを守ろうとする人々が次第に邪悪に見えてくること。
朽ち果てたマンションや廃墟と化した街中での争いは、まるでゾンビ映画のように不気味で怖い。
その夏、エメットが休暇で南部ミシシッピ州の親せき宅に滞在することになる。
メイミーはエメットに南部では言動を慎むよう言い聞かせるが、好奇心旺盛なエメットは
ちょっとだけ羽目をはずしてしまう。
そして、白人の怒りをかったエメットは連れ去られ、凄惨なリンチを受け、川で遺体となって
見つかる。
若き日のウィリー・ウォンカ(ティモシー・シャラメ)は
「いつか世界一のチョコレート店を作る」という亡き母
(サリー・ホーキンス)との夢を抱いて、チョコレートの
町にやってくる。
悪魔祓いの儀式がスケールアップ
50年ぶりに蘇った『エクソシスト』新章
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3つの異なる環境で、“特殊”な事情を抱えた人々が“自分らしい”生き方を模索する姿が
描かれる。
但し、彼らは本当に“特殊”なのだろうか。ただ、人と違う側面があるに過ぎない。
でも、そのために人の目を恐れている。
おそらく、そのような感情を持ちながら、生き辛さを感じている人は多いのではないだろうか。
そんななか、アーネストはオセージ族のモリー(リリー・グラッドストーン)と恋に落ちる。
結婚の意思を固めたアーネストに対し、ウィリアムはモリー一族の財産を得るチャンスと捉え
恐ろしい計画を企てる。
原作は2017年に出版されたビートたけしの初の
ラブストーリー。
主人公は、手造りの模型や手描きのイラストにこだわる
デザイナー・悟と携帯電話をもたない女性・みゆき。
今の時代では、まさしく“アナログ”な2人の愛の行方が
描かれる。
https://houteiyugi-movie.jp/
https://www.napoleon-movie.jp/
悪魔祓いの恐るべき光景を、まざまざと見せつけた
オカルト・ホラー映画の金字塔『エクソシスト』。
1973年12月のアメリカ公開から50年の節目となる
タイミングで、新たな『エクソシスト』伝説が幕を
開ける。
[11月26日アップ]
大胆な性描写に果敢に挑戦しただけでなく、ベラの心の成長をしっかりと表現した
エマ・ストーンの役者魂に驚かされる。
「訳が分からない」世界なのに、「続きが知りたい」という欲求を満たしてくれるアリ・アスター
監督の作品は、本当に不思議だけれど、やっぱり最高に面白い!
監督・脚本を手がけたコルム・バレードは本作が長編映画監督デビュー作。
人間の心の機微を描くのがとてもうまく、彼の描く人間ドラマに期待が持てる。
バクスターはベラの成長の記録係として、大学の教え子のマックス・マッキャンドレス(ラミー・ユセフ)
を家に招き入れる。
やがてマックスは純粋無垢で自由奔放なベラに惹かれるようになり、バクスターはマックスとベラの
結婚を認める。
すると家を失った大勢の近隣の人々がファングン
アパートへ避難しにやってくる。
しかし、マンション内で不法侵入や殺傷事件、放火
などが起こり、危機感を募らせたマンション住人たちは
部外者たちの侵入を阻止することに決定する。
2022年3月には人種差別に基づく白人による黒人への
リンチを連邦法の憎悪犯罪とする「エメット・ティル
反リンチ法」が成立。
無念の死を遂げた少年は、アメリカに今なお根強く残る
人種差別の完全撤廃への道筋を照らしている。
ライター:能登春子
12月8日より全国ロードショー
[12月17日アップ]
https://happinet-phantom.com/beau/
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映画冒頭では、まだ無知なベラがさまざまな国での体験や人々との出会いを通して
成長していく姿が描かれる。
ヨンタクの最初の仕事はマンション前に陣取る部外者たちを追い払うこと。
初めは冴えなかったヨンタクは捨て身の威嚇で見事に部外者たちを追い払い、住民たちの称賛を
集めるようになる。
食欲や性欲、知識欲など、生きるために必要な欲望を本能のままに追求するベラに対し、
バクスターやダンカンら男性たちにはベラを意のままにしようとする支配欲がみられる。
そんな誤った欲望を持つ、驕り高ぶった男性たちの元から颯爽と飛び立ち、自立していくベラが
痛快だ。
1955年、アメリカ合衆国北部イリノイ州シカゴで暮らすメイミー(ダニエル・デッドワイラー)は
空軍唯一の黒人女性職員として14歳の息子エメット(ジェイリン・ホール)や、紳士的な恋人
ジーン(ショーン・パトリック・トーマス)とともに穏やかな日々を送っていた。
『パディントン』(’14、’17年)シリーズのポール・キング
が監督・脚本を手がけ、今、ハリウッドで大注目の人気
若手俳優ティモシー・シャラメが主人公のウィリー・ウォンカ
を演じた本作は、原作やバートン版に流れる毒気や
シニカルな視点はまったくなく、夢と希望が溢れる、さわやか
な作品に仕上がっている。
ライター:能登春子
12月1日より全国ロードショー
[12月3日アップ]
救助が見込めない中、住民たちはルールを決めて生活し“ユートピア”を作り上げようとする。
しかし、すべての人が気持ちを同じにすることはやはり難しい。
欲望や保身に走る利己的な人がいれば、部外者でも助けたいと思う心優しい人もいる。
人々のさまざまな思いが交錯し、ユートピアを揺るがす事件に発展する。
愁いを帯びた表情が印象的なコットを演じたキャサリン・クリンチは映画デビュー
となった本作で、アイルランドのアカデミー賞と言われるIFTA賞(アイリッシュ映画&
テレビアカデミー賞)の主演女優賞を史上最年少の12歳で獲得した、アイルランド
期待の新星である。
しかし、結婚契約書の作成を依頼された放蕩者の弁護士ダンカン・ウェダバーン(マーク・ラファロ)
が美しいベラを気に入り「一緒に旅へ行こう」と誘惑する。
そして、「世界を自分の目で見たい」と望むベラはダンカンとともにヨーロッパの旅に出る。
そして、この非常事態を住人一丸となって乗り切るために住民を統率する主導者を選ぶことに
する。
選ばれたのは、無我夢中で放火された一室の消火にあたったヨンタク(イ・ビョンホン)だった。
本作は「エメット・ティル事件」の顛末を初めて劇映画化。
この事件がなぜ法律名になるほどの出来事だったのか。
それは、最愛の息子を亡くした母親の衝撃的だが勇気
ある決断が多くのアフリカ系アメリカ人の心を動かした
からだ。
そして、今観てもなお、多くの人々の心に届くはずである。
ヒュー・グラントがウンパルンパに!
温かくて、幸せな気分になれるファンタジー映画
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クリスを演じたエレン・バースティンが50年ぶりに出演していることもあり、本作は1973年版の
直接の続編と位置づけて製作されている。
軍の総司令官となったナポレオンは2人の子どもを持つ未亡人のジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・
カービー)を深く愛するようになり、やがて2人は結婚する。
しかし、奔放なジョゼフィーヌはすぐに他の男と関係を持ち、ナポレオンを苦しめていた。
無辜ゲームの考案者で、すでに司法試験に合格した異端の天才・結城馨(北村匠海)、
友人たちから“セイギ”と呼ばれる久我清義(永瀬廉)、セイギの幼なじみの滝本美鈴
(杉咲花)はロースクールの同級生だ。
『カジノ』(’95)、『ディパーテッド』(’06)など、数々の
犯罪映画を手がけてきたハリウッドの巨匠マーティン・
スコセッシ監督が、本作ではアメリカの恥ずべき
血塗られた歴史をつまびらかに描き出していく。
それは、20世紀初頭、傲慢な白人たちがネイティブ・
アメリカンであるオセージ族に犯した人種差別と
極悪非道な犯罪の数々だ。
監督は『ハロウィン』3部作シリーズのデヴィッド・ゴードン・グリーン。製作は『ゲット・アウト』
(‘17年)、『M3GAN/ミーガン』(’23年)など、ハリウッドのホラー・映画界を牽引する
ブラムハウス。
ヨーロッパ遠征で勝利を重ね、フランス帝国の皇帝にまで上り詰めたナポレオン。
しかし、ジョゼフィーヌとの生活に満たされない思いを抱えていた。
数年後、弁護士になったセイギは馨から「久しぶりに無辜ゲームを開催する」という報せを受け、
会場へ向かう。
そこでセイギは血を流して息絶えた馨と、ナイフを持ち血まみれで放心する美鈴を発見する。
無罪を主張する美鈴はセイギに弁護を依頼。セイギは美鈴を救うために奔走する。
横浜地方検察庁の検事・寺井啓喜(稲垣吾郎)は、不登校のインフルエンサーに影響された
小学生の一人息子・泰希が自分も学校に行かずに動画配信を始めたことに困惑し ていた。
そして、息子の希望を尊重した妻・由美(山田真歩)も動画配信にのめり込み、家庭は
ぎくしゃくしていた。
命の選択をテーマにしたストーリーはスリリングで、特殊メイクを施した少女たちの怪演も
見事。
しかしながら、悪魔祓いの斬新なビジュアルと不気味な旋律の音楽で、観る者を恐怖の
どん底に陥れた1973年版に比べると、インパクトが弱いのは否めない。
ナポレオンの台頭から失脚までの歴史が、1人目の妻ジョゼフィーヌとの愛憎入り混じった
関係を絡めて描かれる。
ナポレオンのドラマチックな恋愛劇は斬新な解釈で、この映画のメインテーマであるが、
2人の複雑な愛の世界に入り込めない人もいるかもしれない。
ロアルド・ダールの人気児童書『チョコレート工場の
秘密』をティム・バートンが監督し、ジョニー・デップ
主演で映画化したファンタジー映画『チャーリーと
チョコレート工場』(’05年)から18年。
https://www.flag-pictures.co.jp/caitmovie/
科学や文明が発達した現代において、悪魔祓いという古典的なモチーフから恐怖を
感じることは難しいのかもしれない。
やはり見応えがあるのは、エジプト遠征や皇帝ナポレオンの戴冠式、ロシア遠征、
ワーテルローの戦いなど、史実を再現したシーン。
11台のカメラを使い、8000人以上のエキストラで撮影されたという壮大なスケールの
戦闘シーンでは、リドリー節全開の生々しいアクションが展開される。
誰が悪いのか。何が正しいのか。
決して知られてはならない真実を覆い隠すように、いくつもの企みが
仕掛けられている。
幾重にも張り巡らされた伏線がつながっていくクライマックスでは、
ちょっとしたカタルシスを味わうことができる。
大学生の神戸八重子(東野絢香)はずっと男性が苦手だった。
だが、学園祭の「ダイバーシティフェス」への出演を依頼したダンスサークルに所属する諸橋大也
(佐藤寛太)のひたむきに踊る姿から目が離せなくなる。
一方、クールにダンスの練習に励む大也は人知れぬ悩みを抱えていた。
1920年代、退役軍人のアーネスト(レオナルド・ディカプリオ)が地元の有力者である叔父
ウィリアム・“キング”・ヘイル(ロバート・デ・ニーロ)を頼り、オクラホマ州に移り住む。
そこでは、石油発掘による鉱業権を得て裕福になったオセージ族のオイルマネーを狙い、
白人の投機家たちによる恐怖支配がおこなわれていた。
不正な後見人制度や結婚でオセージ族の財産を得ようとする白人たちがいるなか、
オセージ族の人々の不可解な死が相次いで起こる。
ライター:能登春子
10月6日より全国ロードショー
穏やかな時間の中で育まれる一途な愛
二宮和也と波瑠が紡ぐピュアなラブストーリー
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素朴な2人の愛を後押しする悟の友人には桐谷健太と浜野謙太、
悟の母親には高橋惠子、「ぴあの」のマスターにはリリー・フランキーなど、
味のある俳優たちが脇を固めている。
[10月1日アップ]
現実世界ではトップアイドルや人気俳優として輝くような活躍を見せる人が、複雑な因縁に
囚われたミステリアスな若者たちを力演。
曰くありげな無辜ゲームの不気味さも手伝い、映画は終始、陰鬱なムードが立ち込める。
広島で両親とともに暮らす桐野夏月(新垣結衣)は大型ショッピングモールに勤めて いる。
あまり人付き合いがよくないのは、特殊なフェティシズムを抱えているからか。
だが、鬱々とした毎日を過ごす中、中学校の同級生・佐々木佳道(磯村勇斗)が広島へ戻って
きたことを密かに喜ぶ。
横浜で働いていた佐々木は会社の人々と馴染めず、両親が亡くなったのを機に広島へ戻って
きたのだ。
スコセッシ監督にとっては初の西部劇ともなる本作は、
主演にレオナルド・ディカプリオ、共演にはロバート・
デ・ニーロというキャストの顔ぶれにも期待が高まる
話題作である。
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気のいい悟を演じるのは自然な演技に定評のある二宮和也。
波瑠はどこか儚げな印象のあるみゆきにぴったりだ。
時代に流されない“アナログ”な2人の姿に好感が持てるのは、絶妙にさりげない俳優2人の
妙演の賜物だろう。
そんな中、この『エクソシスト』新章は、本作を含めた全3部作になる予定といわれている。
https://exorcist-believer.jp/
https://wwws.warnerbros.co.jp/wonka/index.html
https://www.searchlightpictures.jp/movies/poorthings
人種に限らず、“何か”が違うという理由で、さまざまな場面で起こる差別行為。
負の歴史を克明に描き、差別のある社会の恐ろしさを切々と訴える勇敢な女性たちの声に
ぜひ耳を傾けてほしい。
https://www.universalpictures.jp/micro/till
そして、本作の唯一の“毒気”ではなく一番の“お楽しみ”は、何と言ってもヒュー・グラント
演じるウンパルンパ! 
オレンジの小人に扮したヒューはかわいくて、とっても楽しい!
さらに、1973年版の『エクソシスト』で悪魔に憑りつかれた少女の母、クリス・マクニール
(エレン・バースティン)も駆け付け、恐るべき悪魔と対峙する。
https://kotfm-movie.jp/
言葉巧みなウィリアムに翻弄され、アーネストがオセージ族連続殺人に巻き込まれていく過程が
描かれる。
モリーの母や3人の姉妹たち、そしてモリーまで……。他にも、邪魔な者たちを次々に排除していく。
アーネストは実行犯ではなく、殺し屋との交渉をしているだけの“使いっぱしり”。
そんな単純で自堕落で日和見的なアーネストを、ディカプリオがいやらしさ全開で演じている。
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稲垣吾郎がマジョリティの代表のような“普通”の家庭の父親を淡々と演じている。
ほかの4人からはマイノリティの苦悩がひしひしと伝わってくる。
特に、特殊な性癖を持ち、鬱屈とした思いを抱える夏目を演じた新垣結衣に注目だ。
https://bitters.co.jp/seiyoku/#modal
監督は岸善幸、脚本は港岳彦。
『あゝ、荒野』(’17年)を手がけた気鋭コンビが放 つ問題作である。
https://analog-movie.com/
監督を手がけるのは『ホテルビーナス』(’04年)のタカハタ秀太。
“一途に人を愛する”という、人の心に寄り添った“アナログ”的な愛し方が心に沁みる。
しかし、スコセッシ監督はこの忌まわしい歴史の闇を伝えるために、実際に逮捕された
アーネストを主人公に据え、欲にまみえた白人たちの愚行と裏切りのドラマを見事なまでに
描き出した。
ディカプリオも自らアーネストを演じることを申し出たという。
初めのうち、喫茶店でコーヒーを飲みながらとりとめのない話をしていた2人は、やがて焼き鳥屋で
お酒を飲んだり、そば屋のそば打ちイベントに参加したり、海に行ったりと楽しい時間を重ねていく。
そんな中で、清楚で穏やかなみゆきに惹かれた悟は、彼女の素性も知らぬまま彼女にプロポーズ
することを決意する。
トム・ホワイト(ジェシー・プレモンス)率いるFBIが捜査に乗り出した映画後半では、FBI、
アーネスト、そしてウィリアムら3つ巴のスリリングな心理戦が繰り広げられる。
映画の序盤は実際に会って話したり、いろんなことを経験しながら距離を縮めていく2人のピュアな
日常がゆったりとしたテンポで描かれる。
2人の“アナログ”的な付き合い方はもどかしいけれど、なんだか新鮮にも映る。
特に海辺での告白は、まさかの“糸電話”! ロマンティックな海辺のシチュエーションを効果的に
使ったシーンがとてもいい。
そこでは、やはり不気味なウィリアムを生み出したデ・ニーロの圧倒的な存在感に
うならされる。
上映時間は3時間26分。
全編、殺戮が繰り返される激しい物語だが、徹底的に悪者を描き、悪者へ転じることへの
恐怖をまざまざと見せつけるのは、人が悪の道へそれないための戒めにもなるはずだ。
映画を通して、正義を追求するスコセッシ監督の渾身の一作といえるだろう。
けれど、今の時代、携帯電話を持っていないことは大きな謎と障害になる。
ある木曜日、悟が婚約指輪を持って待つ「ぴあの」にみゆきは現れず、以来連絡が取れなくなって
しまう。
楽しそうな笑顔の中にも、どこか陰を感じさせるみゆきがなぜ携帯電話を持っていないのか。
そして、なぜ悟の前から姿を消したのか。みゆきの切ない事情が終盤に明かされる。